NBAを代表する名門チーム、ロサンゼルス・レイカーズが大きな転換点を迎えました。
2025年6月18日〜19日にかけて、バス家が保有していた過半数の株式を、実業家マーク・ウォルター氏へ売却したことが複数のメディアにより報じられました。
売却額は約100億ドル(約1.45兆円)。これはプロスポーツチームの売却額として世界最大規模となります。
なお、バス家を代表するジーニー・バスは、一定期間チームの「ガバナー(代表)」として残留することで合意されている模様です。
新オーナー:マーク・ウォルター氏とは何者か?
ウォルター氏は、金融企業グッゲンハイム・パートナーズの共同創業者兼CEOであり、TWGグローバルのCEO兼会長を務める人物です。
すでにレイカーズの20〜26%の少数株主として関与しており、今回の買収により正式にマジョリティ・オーナーとなりました。
彼はスポーツ界でも著名な投資家であり、MLBロサンゼルス・ドジャースの筆頭オーナー兼会長としても知られています。2012年のドジャース買収以降、球団は財政破綻寸前から復活を遂げ、2020年以降に2度のワールドシリーズ優勝という成果を挙げました。
ウォルター氏の投資は、インフラ整備やサラリー投資だけでなく、アナリティクス部門、栄養士やセラピストの導入など、選手のパフォーマンスを高める全方位的なアプローチが特徴です。
NBAレジェンドのマジック・ジョンソンも「彼はすべてを正しい方法でやる人物」とその姿勢を高く評価しています。
なぜ今、バス家は売却を決断したのか?
1. 分散された所有権の限界
レイカーズは1979年にジェリー・バス博士が6750万ドルで買収して以来、バス家によって経営されてきました。
しかし2013年のバス博士の死後、66%の持ち株が6人の子どもに分割(11%ずつ)されたことにより、所有権は分散し、意思決定が複雑化。2017年にはジーニー・バスと兄弟間で支配権を巡る対立も起き、安定経営への懸念が続いていました。
今回の売却により、一元的な経営体制が整うことになります。
2. 資金力の差と時代の潮流
フォーブスによると、バス家の総資産(レイカーズ除く)は約7億ドルとされており、NBAオーナーの中では30チーム中27位。
近年のNBAでは、スティーブ・バルマー(クリッパーズ)やマット・イシュビア(サンズ)のような超富裕層が多数派を占め、サラリーキャップや贅沢税への対応力がチーム力に直結する傾向が強まっています。
レイカーズも選手サラリーや施設投資の面で、「ファミリー経営の限界」に直面していたと見られます。
3. 驚異的な評価額
2024年にはボストン・セルティックスが61億ドルで売却されたばかりでしたが、今回はそれを大きく超える100億ドルというオファーが提示されました。
1979年の買収額と比較すると、約148倍のリターン。これはバス家にとっても、売却を決断するに十分な説得力があったと考えられます。
ドンチッチの反応と今後の展望
今季トレードでレイカーズに加入したルカ・ドンチッチは、売却報道を受けてSNSで声明を発表。
「ジーニー・バスとバス家にはLAに迎え入れてくれたことを感謝している。マーク・ウォルター氏と共に、レイカーズでチャンピオンを目指すのが楽しみだ」
と語り、新体制への期待感と忠誠心を示しました。
なお、ドンチッチは8月2日から契約延長の対象になります。
マーベリックス在籍時に可能だった5年3億4500万ドルのスーパーマックス契約は結べませんが、
- 4年2億2900万ドル
- 3年1億6500万ドル(2028年に10年勤続を達成すれば5年4億1800万ドルの契約が可能)
といった選択肢があります。
2025オフに契約満了を迎える選手たち
以下は、2025オフシーズンに契約ステータスが変化する主な選手です。
- レブロン・ジェームズ、ドリアン・フィニー=スミス:プレイヤーオプション(FAになるか延長するか選択可)
- マーキーフ・モリス、ジャクソン・ヘイズ、アレックス・レン:完全FA(UFA)
- ジョーダン・グッドウィン:チームオプション
- クリスチャン・コロコ:制限付きFA(RFA)
おわりに:レイカーズ新時代の行方
マーク・ウォルター氏によるレイカーズ買収は、NBA史に残る「世代交代」と言えるでしょう。
長年にわたりレイカーズのブランドを築いてきたバス家から、資本力と実績を持つ新オーナーへとバトンが渡されました。
スポーツにおける「お金の力」は避けて通れない現実です。
今後、レイカーズがどう再建・補強を進めるのか、そしてドンチッチを中心にどのような王朝を築けるのか。今後数年は「ロサンゼルス・レイカーズの第2章」を見届ける大きな節目となりそうです。